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化学物質過敏症について

全国各地から宅配便でクリーニング品が届きます

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 北は北海道から南は沖縄まで、全国各地から『クリーニングハウス ムー』に宅配便でたくさんのクリーニング品が送られてきます。それと共に化学物質過敏症やアトピー性皮膚炎の方をはじめ感謝のお声が届きます。その温かいお声に私はいつも励まされています。

 お客様の中には、衣類に付着している化学物質で頭痛や呼吸困難を起こすため衣類や布団に近づけない方もたくさんいらっしゃって、そんな方々が宅配便を使って私の元にクリーニング品を送ってこられるのです。

 お一人お一人のご要望にお応えできるようにカルテを作っています。

化学物質過敏症はある日突然発症します

 他人事ではありません。反応する物質は人によって違います。同じ環境にいても化学物質過敏症になる人とならない人があります。まだ原因がはっきり解明されていないようで色んな説があります。
一説には、お酒に強い人、弱い人があるように、化学物質も素早く分解して排出できる人、そうでない人があるようです。それは、遺伝子の違いによるのだということです。

新品の衣類をクリーニング

 新品の衣類を水だけで洗っても沢山の泡がモコモコと出てきます。中の洗濯物が見えなくなって、どれだけ洗剤を入れたのかと錯覚をしてしまうほどです。
布を作る時や染色の際に沢山の洗剤や漂白剤を使って洗います。しかし、経費削減などの理由もあるのでしょうか、すすぎがしっかり出来ていないように感じます。この残留洗剤や残留染料などの化学物質に反応して化学物質過敏症の方は、呼吸が出来なくなったり頭痛がして新品衣類を着ることだけでなく、近寄る事さえとても困難な状況になります。
 「着用できるようにしてほしい」と、新品を送って来られる方が多くいらっしゃいます。

化学物質の除去クリーニングの依頼

 新品衣類に付着した洗剤などの化学物質と並んで多いのが、防虫剤臭やドライ臭、合成洗剤臭、消毒液臭など色んな臭いや化学物質の除去依頼も数多くあります。
 「このコートが着用できるようになったら今年の冬は外出できるんです」とおっしゃる方もいらっしゃいます。東北の方は、部屋の中にも氷が張るそうです。
 その方からダウンジャケットの化学物質除去クリーニングの依頼を受けたことがあります。
私は「どうかこのダウンジャケットが着用できるようになりますように……」と祈るような思いでその方に出荷しました。

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 後にお客様からお電話があり、

「ありがとうございます。苦しくありません。お陰様で着ることができました。これでこの冬は凍え死ななくてすみます」と、喜んでいただくことが出来ました。

石けんクリーニング店に出したけど…。

 化学物質過敏症のあるお客様から「水洗いしてくれる他のクリーニング店へ何カ所か出しましたがダメでした。着用できるようにはなりませんでした。ムーさんでクリーニングした衣類は着用できるのです。同じ水洗いでどこが違うのでしょうか?」とご質問がありましたので、考えられる理由を三つお話ししました。

 一つ目は『石ケンで水洗い』といっても、柔軟剤や防縮剤、色止め剤など沢山入れて洗う場合が多い事。
二つ目は、必ずドライクリーニングをやっている事。ドライ機があると工場内の空気が汚染されていて、衣類に影響してしまう可能性があります。
三つ目はドライで洗った衣類と同じ仕上げ台やアイロンを使用することなどです。

 お客様は「そういえば水洗いしてくれる所を何カ所も問い合わせてみたけれど、どこもドライもやっていて、ドライはやっていないと言うのはムーさんだけでした。よくわかりました。ありがとうございました。」と言われていました。クリーニングハウス ムーが少しでもお役にたてて嬉しい限りです。

 また、「天然の成分で化学物質過敏症の方用の洗剤・柔軟剤を独自開発した・・・」というクリーニング屋さんを時々みかけます。いくら天然の成分でも「何か」を入れて洗うと衣類に残留します。一部の方には使えてもそれに反応される方も多いのではないでしょうか?
やはり水に界面活性の効果を持たせることが一番の得策だと思います。界面活性作用があるので汚れはきちんと落ちますし、何も入れないので洗剤が残る心配がありません。

衣類に付着した化学物質を除去するには

 衣類に付着した化学物質を除去するには、水(湯)にそれを移しとるという作業になります。なので移しとる水が多ければ多いほど、水温が高ければ高いほどよくとれます。その移しとる水に洗剤など何も溶け込んでいない方が、衣類に付着している化学物質は水に沢山溶け込みやすくなり、より多くの化学物質を移し取ることができます。洗う水(湯)に洗剤が溶け込んでいると飽和状態になり、衣類の化学物質が水に溶けだしにくくなります。

 付着している化学物質が油性の場合は、洗剤の界面活性の力が必要になる場合もあると思いますが、まず沢山のお湯だけで何度も洗ってみることが大切です。

クリーニングハウスムーの化学物質過敏症対策について

お一人お一人のカルテを作ります

 化学物質過敏症の方は特にお一人お一人反応される化学物質が違います。そういった方々のクリーニング品をお預かりするようになったのは平成8年ごろからになりますので、お話をお聞きすれば長年の感覚でだいたい軽・中・重症なのかがわかります。それがお電話でお申込み頂く理由の一つです。
 また、届いた時の荷姿や中の衣類の梱包の仕方でもわかります。そのような情報もカルテに細かく記入して、お客様のご要望も細かくお聞きしてカルテを作成します。その方にあったオーダーメイドのクリーニングを心がけています。

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個別洗い

 化学物資過敏症の方の衣類は、他の方の衣類とは一緒には洗いません。1点洗いしなければ着用できるようにならいものもあります。もちろん洗う大型洗濯機やアイロン台、アイロン、ブラシ、タライ、ボールその他も専用にしてそれぞれに分けています。
 また、工房内の空気にも細心の注意を払っています。一般の方の衣類と化学物質過敏症の方の衣類を作業する期間を分けています。化学物質過敏症の方の衣類が出払ってから一般の方のクリーニングに取り掛かります。

アイロンがけ

 一着一着、真心を込めて手仕上げしています。仕上がった衣類も他の方の衣類と重ならないように細心の注意を払っています。

 アイロンがけが不要とおっしゃる方も増えてきました。アイロンがけという工程を一つ減らすことがその方には合っているとご自身で判断されたからだと思います。

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乾燥

 乾燥は基本的に自然乾燥です。乾燥機は使用しません。濡れた物を乾燥機にかけると縮みや型崩れなどのトラブルが発生することがあります。

 また、臭い移りを防ぐということも乾燥機を使用しない大きな一因です。反応される可能性が高まる工程は、極力はぶくことを考えています。

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包装

 包装紙は、OPPを使用しています。透明度が高くパリッとした感じの袋です。OPPにも色々あるようですが、クリーニングハウス ムーが使用しているOPPに反応される方はあまりありません。基本的に2重包装で出荷します。
 段ボール箱も独自に依頼して作っていただいています。この段ボールやガムテープも反応される方は少ないようです。

Column

「化学物質過敏症になって」

<はじまり>

 2020年、受付カウンターに置かれた衣類に苦しくて近づけなくなった時「ああ、私もついに化学物質過敏症を発症してしまったのだ」と実感しました。
 安心安全をモットーに全品水洗いのクリーニング店を営んでいる関係上、化学物質過敏症の方から宅配便で、衣類のクリーニング依頼が全国各地から届きます。もう四半世紀あまりの間、化学物質過敏症の方のお声を聞き、出来る限りの対応をしてきたつもりでいました。しかし、「分かったつもり」だったという事を痛感したのです。

 

<きっかけ>

2019年、秋のことでした。お客様から柔軟剤を使ったセーター、ワイシャツなどをお預かりしました。コートやスーツなどもありましたが、こちらは柔軟剤を使っていない(ドライした衣類)にも関わらず、セーターやワイシャツが強く擦れたところに、かなりきつい移り香がありました。全部で300点近くありました。
 なんとかお客様のご要望にお応えしたいとの思いから、芳香性マイクロカプセルを除去する洗濯方法の確立に取り組み実験を繰り返しました。衣類を香付きの接着剤に浸しているような状態になっていることもわかりました。
 ムーの工房では柔軟剤などを使ってお洗濯したこれらの衣類を広げて検証、実験することが出来ません(化学物質過敏症の方々の衣類がありますので)。ボイラーやシンク等、設備の整っている場所を知人にお借りしてそこで作業を行うことにしました。また、柔軟剤に浸したセーター等のサンプルを作り実験を繰り返しました。そして、色んなメーカーの研究室に問い合わせても分からなかったウールに付着したイソシアネート(接着剤などの成分)除去の洗濯方法を完成させることが出来たのです。
 柔軟剤などに使用されているイソシアネートは、杉並病(公害)の原因物質だそうです。
私が化学物質過敏症を発症する大きな一因となった出来事でした。


柔軟剤のイソシアネート除去のお洗濯方法はブログに洗濯のレシピを掲載しています。
 

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